症状に個人差こそ見られますが、要介護の人たちと切り離せないのが、認知症という切実な問題です。次第に意思疎通にも支障が生じ始め、それが顕著になるにつれ、次第に腫れ物に触れるような扱いになりがちですが、これは大きな間違いです。認知症の利用者の機嫌を損ねないための配慮のつもりが、無意識のうちに邪見にしている印象を与えてしまえば、介護に重要とされる相手への尊厳そのものを損なってしまいます。
ここで大切なのが、介護を行っている側が認知症の利用者を必要としていることを認識してもらうための工夫です。どのような些細なことでも構いません。利用者ができることは自分でやってもらうようにお願いして、あたたかく見守ってあげましょう。
日々介護される毎日の中、忘れかけていた達成感を思いだしてもらえれば、それがキッカケとなって感謝の気持ちが芽生え、相互信頼関係へとつながります。もちろんこちらからも常に感謝の気持ちを、言葉と表情と身振り手振りで、その都度しっかりと伝える習慣が大切です。
次に、認知症の利用者は、悪気なく危険な行為に及ぶケースが少なくありません。たとえば結果的に自傷行為につながる行為の場合でも、利用者自身にそのつもりはないのです。相手の安全を思うあまり、咄嗟に声を荒げて叱る、未然にリスクを防ぐべく細かく指摘するなどの行為は、こちらの真意が理解してもらえず、ただ反感を抱かせるばかりです。また理論的に説き伏せようとする行為も同様です。まずは速やかにリスクを排除してから、あくまで穏やかに語りかけ、説教と思われるような行為をしない配慮が求められます。